東京地方裁判所 昭和56年(モ)1371号 判決
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【説明】
一時期、世間を風靡した立体玩具の販売に関する商品主体混同行為の認定の一事例である。商品表示が、商品本体と容器の双方にわたる点がめあたらしく、保護される、いわゆる「他人」として輸入発売元も含まれる点については、既に大阪地判昭56.1.30〔ロンシヤン図柄事件〕(無体集一三巻一号二二頁、後藤勇作評釈・特管三二巻五号五六三頁)がある。
【主文】
一 債権者債務者間の当庁昭和五五年(ヨ)第二五六五号不正競争仮処分申請事件について当裁判所が昭和五五年一二月二五日にした仮処分決定を認可する。
二 訴訟費用は債務者の負担とする。
【判旨】一<証拠>によれば、ルービック・キューブは、昭和五五年七月二五日ころ債権者により我国において初めて発売された回転式立体組合せ玩具であつて、その本体が別紙第一目録のとおりであり、その容器が同第三目録のとおりであること、販売に際しては、右本体が常に右容器に収められて販売されていること、右発売に先立ち、ルービック・キューブは、玩具業界紙において紹介されるとともに、東京国際玩具見本市に出品され、業界の注目を集め、発売されるや爆発的な売行きを示し、同年九月末ころまでには約一五万個が販売され、また、債権者による宣伝活動のほか、全国の新聞、雑誌、テレビ等において写真入りで話題の商品として紹介されたため、同月末ころまでには、ルービック・キューブは、ハンガリー人のエルノー・ルービック氏の創案に係る世界的なブームを呼んでいるパズル玩具であつて、我国においては債権者が輸入発売元となつて販売しているものであること並びにその本体及び容器の形態が玩具業界のみならず一般消費者の間に広く認識されるに至つたものであることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
右認定の事実によれば、昭和五五年九月末ころまでには、ルービック・キューブの本件及び容器の形態は、債権者の販売する商品であることを示す表示として広く認識されるに至つたもので、今日でもなお同様に認識されていることが認められる。
二債務者がキューブ・アンド・キューブを昭和五五年一〇月ころから販売していることは、当事者間に争いがない。
<証拠>によれば、キューブ・アンド・キューブの本体が別紙第二目録のとおりであり、その容器が同第四目録のとおりであること、販売に際しては、右本体が右容器に収められて販売されていること、右本体及び容器は、細部において若干の相違は認められるものの、その大きさ、色彩、素材等形態のすべてにわたり前認定のとおりのルービック・キューブの本体及び容器と酷似していること、とりわけ、容器のラベルに記載された「あなたは30億以上の組合せを解くことができますか?」等の文章が完全に同一文であることが認められ、キューブ・アンド・キューブが全体としてルービック・キューブを模倣した商品であることは、一見して明白である。
以上の認定事実によれば、キューブ・アンド・キューブの本体及び容器の形態はルービック・キューブの本体及び容器の形態に酷似していて、キューブ・アンド・キューブを販売することは、債権者の商品と誤認されるおそれが極めて強い行為であると認められ、また、それにより、債権者は営業上の利益を害されるおそれがあると認められる。右認定は、キューブ・アンド・キューブとルービック。キューブの販売経路が仮りに異なつていても、左右されるものではない。
三債務者は、ルービック・キューブの本件の形状、色彩は技術的機能に由来するものであるから、商品表示として保護することは許されない旨の主張をするが、その色彩は技術的機能に由来するものではないし、形状も、大きさ、素材等については技術的機能と無関係であり、これらの点及び容器において酷似している点を考慮すると、技術的機能に由来するとされるその余の部分を除外しても、前記認定を覆すには足りないものと認められる。
四以上の事実によれば、債権者は、債務者に対し、キューブ・アンド・キューブの譲渡の差止及び廃棄を求める権利を有することが認められる。したがつて、債権者は、本件仮処分決定を求めるための被保全権利を有する。
そして、前認定のとおりキューブ・アンド・キューブがルービック・キューブに酷似し、混同のおそれが極めて強いことを考慮すれば、本案訴訟の確定を待たず仮りにその販売の差止及び執行官保管をすべき必要性も認めることができる。
(牧野利秋 川島貴志郎 大橋寛明)